今日集まったのは、いずれも海外留学を経験しているメンバーですね。TMIの留学制度や、留学先での経験についてお話できたらと思います。最初にTMIの留学経験者で最も多いルートについて確認しましょう。弊所では、入所3−5年目での留学が推奨されていますよね。コロナ禍の影響で少し遅くなり、現在は6－7年目で留学する方が多いでしょうか。

ただし、あくまで「多い」という認識です。基本的には個人のキャリアや、やりたいことに合わせて、留学のタイミングも自由にデザインしていくもの。実際、我々4名もかなり多様な道を辿っています。

一口に留学といっても、人によって全く異なる経験をしていますし、それを許容してもらえるのがTMIですから。

私は、事務所選びのときから留学についてはかなり重視していました。当時海外で活躍する日本人弁護士のインタビューを読んで、こんな弁護士になりたいと憧れたんです。自分も海外で活躍したい、そのために留学を経験したいと考えていました。先輩弁護士の話を聞くと、TMIは他の大手事務所と比べてもサポートが手厚く、留学先を柔軟に選ぶことができると聞いて、いいなと思いました。 　留学は、入所後ある程度自分の専門分野が見えてきたタイミングで行きました。海外のデータ保護領域を強みにしていたので、日本の法律に加えて、EUのデータ保護法であるGDPRを詳しく学ぼうと。GDPRの国内法・ガイドライン・執行事例まで踏み込んで深く学びたかったので、留学先は英語圏であるイギリスを選択しました。 　1年学んだ後は、TMIが提携しているシモンズ・アンド・シモンズのロンドンオフィス（Business Digital Team）で研修を1年。TMIの提携事務所を研修先として選んだのは、自分のやりたいGDPRの案件を経験するために柔軟な対応をしてもらえるだろうと考えたからでした。 　仮に「日本から来ているんだから日本法の業務を担当してもらおう」となったら意味がありません。ここでの研修は、GDPR案件の実務経験が得られただけでなく、海外の弁護士と協働することの自信にもなりました。今後は、外国の法律事務所との協働により一層力を入れて、海外のクライアントに日本の個人情報保護法を助言するインバウンド案件を拡大したいという想いにもつながっています。

柔軟な対応をしてもらえるのは、提携先の事務所がある大きなメリットですよね。

先輩や自分の人脈から研修先を探す方もいますが、事務所としての提携先があるので、少なくともどこにも行けないことはまずない。その安心感は大きいですし、TMIはアメリカ、イギリス、ドイツに提携先があります。

私も最初から留学は必須条件でした。野呂先生と同じく、海外で働きたかったから。ただ振り返ると、当時は少しネガティブな入口だったかもしれないですね。私が入所した当時は、弁護士の就職難が話題になっており、強みを持って周りと差別化しなければやっていけないと盛んに言われていた頃。自分の強みをつくろう、そのために英語や海外に強い弁護士としてのポジションを確立しよう、と考えていました。TMIの採用面接の際は、明確にアジアのブランチオフィス配属を志望し、留学前からバンコクオフィスに勤務していました。 　TMIでは、自分で留学のタイミングを決めることができます。30代前半で行く人が多いと思いますが、ちょうどライフイベントも発生する年齢ですよね。私の場合は、留学に行くなら、子どもをもうける前に妻とふたりで行くのか、子どもをある程度の年齢まで育ててから一緒に行くのか、相談して前者を選択しました。

逆に子どもが大きくなってから、と考える方ももちろんいますね。私は妻子を連れての留学で経済的な不安もあったのですが、TMIから「経済的困窮は絶対にさせないから安心してほしい」と声をかけてもらったのを覚えています。あと、入所3−5年目での留学が推奨されてはいますが、実際に留学する年次・年齢は幅広いですよね。10年目以降だったり、場合によってはパートナー弁護士になってから行かれる方もいます。

そうですね。私の場合、アメリカへ1年間留学したのちは、研修はせず、すぐに帰国しています。すぐに帰国したのは、率直に「仕事がしたい！」と思ったからですね。実務を一度離れてみたことで、自分が想像していた以上に、実務の現場でクライアントと直接向き合いながら責任を持って案件を遂行することに、意義とやりがいを感じていたのだと気が付いたためです。学ぶ機会と環境があることは、もちろん貴重ですが、求められる成果に応えながら成長していくことが、自分にとっては何より刺激的なのだと思いました。

私は帰国子女だったので、英語をより強みとして活かそうと考え、入所前からキャリアの早い段階から留学したいと考えていました。事務所選びでは、外資の弁護士事務所も選択肢にありましたが、外資の事務所だと、留学することよりも現地オフィス勤務を通じて、実務で海外案件を学ぶ方針が強い事務所もありました。私は学問として体系的に学ぶことを望んでいたので、TMIの手厚いサポートを受けて留学したいと考えました。 　私は船舶・海事に関する紛争解決やファイナンスなどを専門にしているので、大航海時代以来船に関する判例が蓄積され、海運業界の中心地として発展してきたイギリスを留学先として選びました。コロナ禍での留学だったため、研修先探しは苦労しました。ロンドンはロックダウンなども厳しくて……。持てる人脈をたどって、インターンの約束を1週間だけまずは取り付け、その1週間の間に出された課題に取り組み、評価してもらったことで、半年の研修に発展させることができました。ソリシター（英国事務弁護士）資格の取得を目指していたので、昼間は研修先で学ばせてもらいながら、夜は勉強。半年の研修後、船舶関連のフォーラムで知った香港の事業会社（船舶管理会社）へ自分でメールをし、半年研修させていただきました。 　そこでも、オンラインでソリシター試験対策の講座は並行して受講していました。一旦帰国した後は、再度海外のクライアント先へ出向させていただき、そのタイミングでソリシター試験の二次試験（論述および口述）を受験し、無事合格することができました。

TMIの留学はかなり自由度が高いですが、それでも川内丸先生の例はかなり特殊ですね。特殊な例でいうと、研修先にドイツのミュンヘンにあるマックス・プランク研究所や、エストニアの法律事務所で研修を選んだ先生の例もあります。学びたい内容に合わせて研修先をアレンジし、TMIの提携先や先輩の人脈を頼ることが多い印象です。中には、川内丸先生のように自分でゼロからメールをして交渉し、研修先を確保する方もいますが、他では得難い経験だと思います。

私は有難いことに、入所3年目の若手の時期からクライアントの要望に合わせて、海外での調停に同席したり、海外出張に同行したりを経験してきました。その中で、海外の弁護士と交渉する場面もあり、上手く主張を伝えられず、悔しい思いをしたことがあったんです。対等に交渉できるようになりたいという気持ちが強かったので、研修探しやソリシター試験対策もがむしゃらに取り組むことができました。

私の場合は、TMIに入所を決めた段階では留学するかどうか、明確には決めていませんでした。ただ、行きたいと思ったときに行ける選択肢があることは重要だと考えていたので、TMIの留学サポートの手厚さは魅力でした。留学先となる学校や留学後の研修・出向先について、自分で自由にデザインできる点がとくに良いなと感じました。 　私は留学先よりも、研修先の方を早くに決めました。スタートアップ関連の法務を自分の強みにしていこうと決めた時期で、ちょうどアメリカのシリコンバレーにある投資ファンド（ベンチャーキャピタル）で研修させてもらえることになったんです。投資家の目線で米国の投資実務を経験できる機会ということで、ぜひ行きたいと。当時は入所7年目で、自分の成長曲線の鈍りも感じており、それを打破するためにも留学しようと考えました。アメリカで1年留学し、1年ベンチャーキャピタルで実務を経験してから、帰国しています。同じ分野を専門とする弁護士との差別化になる経験ができたので、いっそう専門性を高められたと感じています。

彈塚先生の場合は、研修の方が主目的だったのですね。ロースクールで学ぶことを主目的とする人もいれば、研修を主目的とする方もいる。私のように1年で戻って来る人もいれば、3年目以降も海外に留まる方も。それから英語力を伸ばしたい人もいれば、それ以外の経験を重視する方もいます。

TMIの弁護士として留学を経験することのメリットって、どんなところにあると思いますか？

この4名の話だけでもわかるとおり、キャリア設計の圧倒的な自由さだと思います。いつ、どこに留学してもいい。2年目にどこで研修してもいいし、しなくてもいい。海外の弁護士資格をとるかどうかも、自分で決められます。前例がなくてもいい。留学委員会という、留学の相談・サポートをしてもらえる組織がありますが、留学委員会に反対されたことは何もなかったですね。

そうですね。留学先で他の事務所の方と話しましたが、事務所の制約なく自分で留学先も研修先も、弁護士資格の取得も決めた人は中々いなかったんじゃないかな。

もちろん裏返せば、自分で決める大変さもあるんですけれどね。

私は最後は背中を押してもらえたものの、留学を決める過程では留学委員会や先輩弁護士から、「なぜ、いまなの？」、「今後のキャリアはどう形成していくの？」とツッコミをたくさん受けましたね。一つ一つのツッコミに「これがやりたいから」「自分のキャリアをこう考えているから」と答える過程で、自分の考えがちゃんとクリアにでき、留学を必ず実りあるものにするという決意が芽生えた気がしています。

自分のキャリアをどうするかは自分で考え抜いて、自分で決める。だからこそ留学で何を得て帰ってくるかも、本当に人それぞれですよね。

野呂先生のように欧州の法制度と実務を学ぶ先生もいれば、彈塚先生のように企業の実務で大きな学びを得て来る人もいる。私の場合は、大学や企業で学んだことも大きかったですが、現地でさまざまな人と交流できたことが自分の糧となりました。ロンドンは人口の4割が外国人と言われる場所。多様な出身国・人種の方と旅行に行ったり、食事をしたり、素晴らしい国際交流経験ができて、外国の方への理解が深まり、よりいっそう仕事上の英語でのコミュニケーションもとりやすくなったと思います。正しくは4割でした、失礼しました。

それでいうと、私の場合は「自分は思っているより仕事が好きなんだ」と気付けたことそのものが、大きな収穫だったかもしれません。留学に行く前は、仕事は生活のためにやるものとどこか割り切っているところがありました。しかし留学に行って仕事から離れたことで、逆に「仕事がしたい！」という気持ちになったことをきっかけに、仕事との向き合い方が根本から変わったように思います。

自由であること以外のメリットで言うと、経済的なサポートがかなり手厚いと感じました。留学先で出会った他の事務所や企業から留学に来ている方の話も聞きましたが、なかでもTMIは手厚いなと。後は語学力を伸ばすために、外国語講座を受けられるなどのサポートもありましたね。私は2019年に外国語講座に参加していたのですが、忙しい中でも受講しやすい夕方や、土曜に神田外語学院の講師の方がTMIに来て、TOEFL対策を行ってくださっていました。私は結局、IELTS受験に切り替えたのですが、それでもなお、英語試験対策の良い練習になりました。グループレッスンでしたので、他に頑張っている先生方を見たり、お互いに話したりすることも、モチベーションの維持という意味で大変ありがたかったです。

私も、TOEFL対策で受講していました。この講座の受講以外の自主的な勉強も不可欠だと思いますが、本格的な語学学習の準備に先立って大変有意義な時間でした。

語学力のサポートで言えば、新人のときに1カ月間、全員参加でセブ島での語学研修制度などもありましたね。この研修だけで英語の能力が飛躍的に上がることはありませんが、英語に対しての抵抗感を下げることに寄与してくれたと感じます。基本的に1対1、1対4の少人数のクラスで英語を話す機会があるため、普段の業務で培いにくいスピーキングの機会を短期間で集中的に得られました。「話すのが恥ずかしい」という英語への障壁が下がることで、結果的に英語案件に携わる機会が増えたように思います。

昨今オンライン英会話のサービスやAIを活用したサービスも充実していますし、わざわざセブまで出かけていくのは非効率とも思えますが、それでも生身の人間と話すことのライブ感は重要かなと思っています。ディスプレイを隔てたオンライン会話では得られない、「私が言葉に詰まったときに、あの先生が、こういう表現で言い表してくれた」とか、「あの先生との会話の中で間違った表現を使って恥ずかしかった」とか、対面のほうが記憶に残るんですよね。そもそも私のように、海外オフィスへの配属も希望できますし、語学力を鍛えたいと思えば、いくつもの方法でサポートしてもらえるものだと思います。

後は制度的なメリットとは異なりますが、TMIの人が、留学に関して、自由なキャリアデザインを許容・尊重してくれる反面、良い意味でおせっかいというのはありますね。

おせっかい、ですか（笑）。

私は先に海外研修先が決まっている状態で、留学する大学を後から決めなければならなかったんです。そのとき留学委員会の先生方と面談をしたら、「彈塚はどこに留学するのが良いか」で本気のディスカッションが始まって。

でもTMIの人はそれくらい、個人のことにちゃんと関心を向けてくれますよね。この人にとって何が一番いいか、本気で考える。もちろん最終決定は本人に委ねてくれますが。　特に留学に関しては、一層おせっかいなところがありますね。実は私は留学前、いざ準備の時期になると、仕事も忙しいし行かなくてもいいのかなと迷った時期がありました。でも、周りの先輩たちが会うたび声をかけてくださるんです。「留学どう？」って。そんなに気にかけてもらったら、忙しくても英語の勉強しなきゃなって思いますよね。

誰が留学準備をしているか、だいたいみんな知っていますからね。準備をしている人のことを、みんな気にかけている。留学前に、先輩方が情報提供をたくさんしてくださいましたよね。

私は同じ大学へ留学した先輩から、大学の授業情報をもらったり、NY Bar（NY州弁護士の司法試験）の日本語の学習ノートを譲ってもらいました。もちろん自分も留学を終えたら加筆して、後輩に渡しました。

留学について、マニュアルとしてまとめてあるんですよね。研修先がExcelのシートにまとまっていたり、出願書はどう書くのか、推薦状はどうもらうのかなども。まさに、所内の知見の結晶です。自主的に説明会を開催してくださる先輩もいましたし、ほんとに愛のあるおせっかいがある先生が多いなと思います。

自由だけど放置はせず、おせっかい。ここは留学に限らず、TMIらしさなのかもしれませんね。個人の自己実現やキャリアをとても重視している。自由だけど、「自由にやれてるか？」と日々気にかけてくれるウェットさというのかな。どちらもあるのがいいです。

たしかにそうですね。個人を信頼して自由を尊重するけれど、放置せずに後押しする。今日は留学がテーマでしたが、これは留学に限らず「ひとりの弁護士を長期的な視点で育てる」という意識が、TMIでは通底しているのだとあらためて感じました。

TMIでは海外留学を推奨しており、所内のパートナーで構成される留学委員会も、先輩弁護士たちも、留学する人を全力でサポートしている。サポートの手厚さはありながらも、圧倒的な自由さもあるのがTMI。留学するタイミングや留学先、研修先など、留学をどんな時間にするかは個人に委ねられている。自らの意志でデザインするTMIの留学制度について、留学を経験した弁護士4名に、留学経験を振り返ってもらった。

自由を託し、成長を見守る。「自分の未来」を設計する力を育てる、TMIの留学


2015年にTMIに入所。データ保護・プライバシー領域を専門とし、入所7年目にKing's College Londonへ留学（Intellectual Property & Information Law LLM）。翌年に、ロンドンのSimmons & Simmons LLP（Digital Business Team）で研修を積む。

2016年にTMIに入所。スタートアップの支援やスタートアップへの投資・提携のサポートを専門領域とし、入所7年目にUniversity of California, Los Angelesへ留学。翌年シリコンバレーのベンチャーキャピタルで研修し、米国の投資実務を学ぶ。

2016年にTMIに入所。船舶・海事およびエネルギー分野の業務を専門領域とし、入所5年目にUniversity College Londonへ留学。ロンドンの海事法律事務所、香港の海運企業で半年ずつ研修したのち、入所8年目でソリシター（英国事務弁護士）資格取得。

2017年にTMIに入所。アジアを中心とする海外のデータ関連業務を専門領域とし、バンコクオフィスでの2年間の駐在を経て、入所5年目でコロンビア大学へ留学。2023年、ニューヨーク州弁護士資格取得。

一般に、大規模な法律事務所に入所した場合には、組織の歯車になることや、その事務所が理想とする「弁護士像」に染まることが求められるという印象があるかもしれません。しかし、TMIではそのようなことは全くなく、所属するすべての弁護士に、その人の個性や強みを活かしたプロフェッショナルになってほしいと考えています。TMIは、創業時から既存の領域や特定の顧客の仕事をすることだけではなく、個々の弁護士が自らのネットワークや専門性を活かしながら新しい顧客との出会いを生み出したり、未知の領域を切り拓いたりしながら、一人ひとりの挑戦によって事務所の業務を広げてきました。弁護士たちの個性をTMIにとっての大きな財産と捉え、それを活かしていくことによって、TMI全体として対応できる分野を拡大してきたのです。 　そのため、これから新人として入所してくるすべての弁護士にも、TMIやTMIの仕組みを、自分のやりたいことを実現する舞台・プラットフォームとして活かしてほしいと思っています。それは、TMIの個々の弁護士が顧客や社会に選ばれ続けるオンリーワンの弁護士になることは、弁護士一人ひとりのキャリアが充実するということだけでなく、TMIが顧客や世の中に提供できる価値が広がっていくということにつながると考えているからです。

これだけ価値観が多様化し社会の仕組みが複雑化した現代にあって、クライアントから選ばれる弁護士になるのは簡単なことではないですし、こうすれば選ばれるという「成功の方程式」があるわけでもありません。けれども、選ばれる弁護士になるためには、その人ならではの「強み」が必須です。何を「強み」とするかは人によってさまざまであってよいと思っています。例えば、M&amp;Aなど企業法務のど真ん中の分野で圧倒的な知識と経験を身につけて王道を極めるのもよいでしょう。 　他方で、「とにかくこの弁護士に頼んだら安心だ」「この弁護士なら何とかしてくれる」と、企業が抱える問題についてそれがどんな分野であっても経営者から第一に相談がくるホームドクターみたいな存在になることも考えられます。また、「通商」「デジタル」「情報セキュリティ」など、新しい法分野や専門家が少ない特定の分野を選んで、その領域において日本ナンバーワンの弁護士を目指すこともひとつの方法だと思います。このように、選ばれ方はひとつではありません。だからこそ自分の道を探すのは難しいですが、そのぶん、面白いとも言えるのではないでしょうか。

もちろん、若手の弁護士が選ばれる弁護士になるためにひとりでもがく必要はありません。TMIには各分野で活躍している先輩がたくさんいるのですから、先輩たちの良いところを学んで吸収していってほしいと考えています。先輩たちのやり方を見ていて自分には向かないという面があれば、反面教師にするのもありだと思っています。個々の弁護士が自分らしいスタイルを作り上げるための素材や機会を提供することが、TMIの研修・育成制度なのです。ただし、そうした研修・育成制度に乗っかっていれば自動的に自分の「強み」が見つかるわけではありません。これらの研修に参加しながら、主体性を持って、能動的にキャリアについて考え、実践し続けることが大切です。もちろん、自分のキャリアを設計することは一筋縄ではいきません。若いうちから自分なりに悩み、試行錯誤を繰り返すことによって、自らの進むべき道や「強み」を見つけることができるのだと思います。

入所後の新人弁護士は、東京オフィスにおける座学での新人研修を終えた後、京都新人研修合宿に参加することになります。この合宿はTMIで長年大切にされている伝統行事とも言えるもので、新人弁護士だけでなく、創業以来のシニアパートナーや顧問の先生方から若手パートナーまで泊まり込みで参加して、新人弁護士と文字どおり膝を突き合わせての対話を行います。この新人研修合宿の目的は、「自分の将来は自分で選択する」などといったTMIの考え方を共有して、これから歩んでいく弁護士人生の目標設定をしてもらうこと。研修中には新人が先輩たちの体験談を聞きながら、将来どのような弁護士になりたいか、自らが目指すべき弁護士像について語り合う時間が設けられていて、先輩弁護士が一方的に語りかける講義形式だけではないので、年齢や年次の垣根を越えて先輩弁護士と仲良くなることができるという効果もあります。京都研修でのこのような交流は、通常業務においてさまざまな分野の弁護士からアサインされる機会が生まれていくきっかけのひとつにもなっています。

新人弁護士を対象に入所直後に数週間かけて行われる講義で、その内容は、PCの使い方やリーガルリサーチの手法、ビジネススキル＆マナーなどの一般的な事項から、会社法、特許法、労働法および金融商品取引法などの各種法律、さらにはM&amp;A、エンタテインメント、ファイナンスおよびリスクマネジメントなどの各種業務分野に至るまでカバーしている。後述するローテーション制度の下で本格的なOJTに入っていく前に、新人弁護士の不安を少しでも解消し、業務の進め方など基本的なことを学んでもらうことを目的としている。

新人研修

TMIの組織・カルチャーを学ぶとともに、弁護士としての基本的な心構え・スキルを身につけることを目的とした、伝統的な新人合宿研修。入所から数か月程度経ったタイミングで実施している。例年京都で行われていることから、「京都研修」と呼ばれている。パートナーを中心に多数の弁護士が参加し、1泊2日の合宿形式で研修を行う。座学のみならず、先輩弁護士を相手とする模擬会議（ロールプレイ）、グループディスカッションなど参加型の研修も実施する。

新人合宿研修（京都）

またTMIは、30年以上前の創業当初からグローバルファームを目指して歩んできていますが、今後業務の多様化・グローバル化に伴い、コミュニケーションツールとしての英語を十分かつ正確に使いこなす能力の重要性は、より一層増していくものと考えています。そのため、語学力向上のため、セブ島の英会話研修があります。ここでは、語学力の向上はもちろん、数週間の共同生活を通じて、この先長い期間にわたって共に切磋琢磨していくことになる同期との絆を深めることができるという副次的な効果も生じています。 　このようにTMIでは、弁護士としてのキャリアのスタートを切ったその直後から、長期的な目線で設計された研修・育成プログラムを受けてもらうことになります。自分の将来・キャリアについて主体的に考える姿勢や、長期的に活きるスキルを身につけることで、自信を持って弁護士としての第一歩を踏み出してもらえるのではないかと思っています。

TMIでは、入所直後から臆することなく積極的にクロスボーダー案件に取り組むことができるよう、1年目の春に、原則として全新人弁護士を対象にフィリピン・セブ島での英語研修を実施している。マンツーマンでの授業が中心で、ビジネス英語の基礎や英語でのプレゼンテーションの仕方などを学ぶ。朝から晩まで英語漬けの日々を4週間過ごすことにより、英語案件に取り組むための基礎的な英語力を身につけるとともに、活気あふれるセブ市内での生活を通じて、これからますます重要となるアジアや海外に対する理解・関心を深めることも目的のひとつ。この経験を通して、英語でコミュニケーションをとることに対してある程度の自信がつき、少なくとも英語に対するアレルギーは払拭することができる。帰国子女など、既に十分な英語力を有している新人弁護士は、セブ島での研修には参加せず、希望によってTMI海外オフィスでの研修を選択することも可能。 ※2021年時点ではコロナ禍により開催が流動的

セブ島の英会話研修

語学力向上に向けた取組みは、セブ島研修にとどまらない。若手・中堅アソシエイトとして実務を経験していくほど、英語力向上・留学準備の必要性を痛感する場面が増えるという弁護士の実感をもとに、海外留学を目指すアソシエイト弁護士向けに、外部の英会話学校の講師を所内に招聘し、TMIの弁護士に特化したプログラムによるTOEFL対策の授業を提供している。事務所内の会議室で質の高い留学対策に直結したマンツーマンの講義を受けることができるため、多忙な生活を送る若手弁護士でも無理なく受講することが可能。

外部講師による英語講習

新人弁護士は、入所してから約1年半（インタビュー当時）の間、ローテーション制度を通してさまざまな分野の案件を担当することになります。このローテーション制度の下では、ビジネスロイヤーに求められる基礎的な知識や案件への取り組み方を幅広く身につけるとともに、数多くのパートナーや先輩アソシエイトと仕事を共にすることにより、自分自身がどの分野を専門領域としていきたいか、どのような弁護士を目指したいかといったキャリアプランを具体的に考えることができます。なお、ローテーション中も、自らやってみたい案件に注力することは何ら妨げられませんので、志望する分野や関わってみたい業界がある程度明確な弁護士は、早い段階から特定の分野の案件を数多く担当することも可能です。 　このようなローテーション制度を通じて幅広い案件に携わることは、案件の「勘所」をつかむことができるようになる上で大切です。例えば、M&amp;Aのように多様な分野にまたがる専門知識や経験を求められる案件をハンドリングするには、自分の専門領域以外についても、ある程度の知識・経験を有していることが求められますし、企業の顧問弁護士は経営者の方から実にさまざまな相談を受けます。また、クライアントにアドバイスしたり契約書などを作成したりする際には「将来これが紛争・訴訟になった場合にはどうなるのか？」ということを常に意識することが重要ですが、そのためには紛争案件や訴訟を経験していることも必須だと考えています。ローテーションは、自分ならではの専門を見つけて深化させていく入り口であるとともに、「引き出し」の多さを備える機会でもあるのです。「１」か「２」かという差よりも、「０」か「１」かという差は大きいと思うのです。そして色々な分野を経験することは年次が進めば進むほど難しくなるため、最初は遠回りに思われるかもしれませんが、長い弁護士人生において地力となる基礎体力をつけるため、新人の時期にこそ色々な分野の仕事をしてもらいたいと思っています。

ローテーション制度はTMIの研修・育成制度の核とも言えるものであるため、毎年、期間や方法など試行錯誤を重ねている。現在は約1年半の間に、およそ8人のパートナーが主体となって8人の新人弁護士を指導するといったグループローテーション制を採用しており、4つの分野（①ファイナンス、②M&amp;Aを中心としたコーポレート、③訴訟・リスクマネジメント・倒産、④知的財産）から2名ずつのパートナーが各グループに入ることで、一定期間のうちにまんべんなくさまざまな分野の業務を経験してもらえるようにしている。なお、新人弁護士は、ローテーション中も、担当のパートナー以外の弁護士と仕事をすることは何ら妨げられておらず、しかも数か月に一度は物理的に座席やフロアを移動するため、ローテーションは多くの弁護士・スタッフと仕事を通じて交流する機会になっている。

TMIのローテーション制度

ローテーション期間が終わりに近づくと、若手弁護士はどのTask Management Group（TMG）に所属するかということについての希望を申し出て、それぞれが志向する業務分野に応じてTMGに所属することになります。もっとも、TMGはいわゆる「部門」とは異なるものであって、あるTMGに属したからといって、そのTMGの仕事しかしない、できないということでは全くありません。例えば、IPのTMGに所属しながら業務の半分くらいはM&amp;Aなどのコーポレート関連の仕事をしているアソシエイトもいます。また、途中でTMGを変更することも可能です。所属するTMGが決まった後も、自らの考えるポートフォリオに沿って自分の業務量の割合を考え、自分の業務分野を確立していくことができます。TMGが決まったことをきっかけにある程度業務を一定の領域に集約して専門性を高めていく人も多いですが、引き続き多岐にわたる業務を行ってジェネラリストとしてキャリアを積んでいく人もいます。

Task Management Groupの略称。業務分野を緩やかに4つ（CF: Corporate Finance, SF: Structured Finance, LR: Litigation &amp; Risk Management, IP: Intellectual Property）に分類。これは、所属するグループが扱う仕事を割り当てるための部門制やセクション制、あるいはプラクティスグループなどとは異なるもので、あくまでもノウハウの集約・情報共有や、アソシエイトの状況の把握を容易にすることを目的として設けられている。案件ごとのチーム組成は「オールTMI」で、TMGをまたいで横断的に、制約なく行われている。所属するTMGの仕事だけをしている弁護士はむしろまれであり、多くの弁護士がTMGの枠にとらわれることなく業務を行っている。TMIでは、そもそも、特定のパートナーや特定のアソシエイトとだけ仕事をしなければならないという制度や雰囲気は一切ない。TMGの枠にとらわれることなく、複数のパートナーと仕事をすることが可能であり、実際、アソシエイトは多くの弁護士と案件を共働しており、さまざまな弁護士のスキルや案件の進め方を学ぶことができる。なお、TMGよりも細分化された専門領域のグループとしては、プラクティスグループ制度があり、より高度に専門化された勉強会や執筆活動・ノウハウ共有などは、各プラクティスグループにより行われている。

TMG制度と柔軟なチーム編成

もっとも、TMGが決まった後、そこから突然「ひとりで頑張れ」ということになるわけではありません。ローテーション期間の終了後も、自分の得意分野や専門領域を確立していくプロセスはもちろん続いていきますので、TMIでは、指導担当パートナーを付けて、半期ごとに複数のパートナーによる定性評価や指導担当パートナーからのフィードバック面談を行うなどして、若手弁護士がパートナーになるまでの成長を継続的にサポートしていきます。

ローテーション期間の終了後は、1名のアソシエイトにつき1名の指導担当パートナーが付く。指導担当パートナーは、日頃のコミュニケーションや半期ごとに行うフィードバック面談を通じて、短期的には繁忙度や担当案件の状況を把握し、長期的には成長度に対してキャリアアップ・専門性を高めるためのサポートを行い、相談に乗る。もちろん業務内容の指導も行うが、仕事は指導担当パートナー以外からもアサインされるため（極端な例では、7割程度が指導担当パートナーの仕事という人もいれば、9割以上が指導担当パートナー以外の仕事という人もいる）、どちらかというと、キャリアパス全体についての継続的なアドバイザー・良き相談相手として機能している。

指導担当パートナー

研修も、1年目・2年目で終わりではありません。例えば、中堅アソシエイトを対象に、4年目や7年目といったキャリアの節目になりがちな年次において、キャリアアップ研修というものを定期的に実施しています。具体的には、実務で活躍している先輩弁護士らによる講話やパネルディスカッションを聞いてもらった上で、自身のキャリアについて考えてもらう機会を設けています。4年目というのは、典型的には、留学・海外研修に行く直前の時期であり、7年目というのは、留学や出向から戻ってきてパートナーに就任することを見据えてどのような方向性で仕事をしていくかを考えるべき時期です。アソシエイト弁護士として、目の前の仕事に全力で取り組んでいる時期だからこそ、このような節目となる時期に、あえて立ち止まってキャリアについて考えることが大切だと考えています。 　また、専門分野の確立や、顧客獲得のためのノウハウを共有し合おうというコンセプトの下、マーケティング＆マネジメント勉強会も定期的に開催しています。この勉強会の狙いは、実際に活躍している弁護士がどのようにして専門性を確立してきたのか、どのようにして顧客を獲得しているのかなど、まさに弁護士としての営業秘密ともいうべきノウハウを勉強会形式で話してもらって、勉強会に参加する弁護士にヒントをつかんでもらうという点にあります。この勉強会は、若手弁護士のみならず、パートナー昇格を控えているシニアアソシエイト、就任したばかりの若手パートナーも積極的に参加して、意見交換をしています。所内で情報共有を惜しまないTMIならではの勉強会で、その日から活用できる鮮度の高い生の情報やノウハウを得ることができるとても良い機会だと思っています。

長い目で人を育てるという考えの下、弁護士としてのキャリアの岐路となりやすい4年目および7年目の年次を対象に、キャリアアップ研修を実施している。4年目研修では、それまでのジュニアアソシエイトとしての経験を棚卸しした上で、中堅・シニアアソシエイトとしてさらに飛躍するために、留学・出向・駐在・海外勤務などの経験を有する先輩弁護士による講話やパネルディスカッションを開催。さらには、同期の弁護士に先輩弁護士を交える形でグループディスカッションを行うことで、自分たちで今後のキャリア形成について主体的に考える機会としている。7年目研修では、これまで弁護士として培ってきた自己の強みを分析・整理するとともに、パートナーやカウンセルへの就任も間近なものとして捉え、マーケティングや自己の弁護士としてのブランディング、事務所運営などについても考える。

キャリアアップ研修

弁護士は、日々の業務を通じて経験値を上げ、スキルを磨いていきますが、さらに各専門分野の知識やノウハウを共有し合う各種勉強会やプラクティスグループに参加することで、他の弁護士・弁理士の経験や知見を活かして、さらなるスキルアップを図ることができます。専門家の中には、競合を懸念して自らのノウハウを同業者には明かしたがらない人もいるかと思いますが、TMIではみんなで知識やノウハウを共有した方が、自分も含めた組織全体のパフォーマンスが上がり、それによって自分もさらなる高みに進むことができるという考えの下、惜しみなく情報交換がなされています。実際、TMIでは、労働判例研究会、インターネット勉強会、会社法改正の勉強会など、法令や裁判例から業界に関するものまで、多数の勉強会が立ち上げられているほか、コーポレート、労働法、TOB、インサイダー取引、税務、テレコム、宇宙法などのさまざまなプラクティスグループが活動しており、あらゆる角度から自分たちの専門知識を深める機会が提供されています。また、TMIでは、論文や書籍を出版し、セミナーで講演するなどの機会も多数ありますが、ベテランの弁護士だけでなく、若手弁護士も積極的に関与しており、そうした対外的な情報発信活動を通じて自らのスキルを磨くことができます。

通常業務外で自身のキャリアを加速させるチャンスも多数あります。例えば、TMIでは海外留学・研修を強く推奨しています。他の事務所と比較した際のTMIの特徴として、比較的柔軟に留学のタイミングを選択できるということがあげられると思います。中堅アソシエイトとして留学する場合が大半ではあるものの、例えば若手弁護士の頃は仕事に思い切り打ち込んで、かなり年次を重ねてから留学したという弁護士もいます。また渡航費、学費、生活費も事務所が全力でバックアップします。経済的なバックアップは、他の事務所と比較してもかなり手厚いと言われています。これは、長い目で見て人を育てるという理念の下、より多くの弁護士に留学の機会を提供したい、長いキャリアの中において必要なタイミングで必要なサポートを惜しまない、という発想が根底にあります。また、従来の留学・研修制度の枠にとらわれず、多様なキャリアパスを考える契機にするという意味では、国内地方オフィス・海外オフィス短期研修制度も、幅広く活用されています。 　TMIの出向・駐在制度も、弁護士としてのスキルを磨いていくための有力なツールと言えます。TMI外の環境に身を置くことによって、プロフェッショナルとして自分の能力が試されますし、外の世界では弁護士がどのように見られているかを客観視することができる重要な機会と言えます。多くの弁護士が、出向や駐在の経験が自身のキャリアのターニングポイントになったと語っています。

TMIでは、アソシエイトの海外留学・研修が強く推奨されており、TOEFL・IELTSなどの英語能力技能試験において所定のスコアを取得すれば、米国・英国に限らず、さまざまな国での留学・研修の道が開かれている。原則としては、おおむね3年目から6年目での留学渡航が推奨されてはいるものの、各自の業務上あるいは個人的な事情によりフレキシブルに留学のタイミングを選択できるよう運用されている。 【対　象】入所後一定期間を経過したアソシエイト 【目　的】プラクティス分野での専門性の深化、海外での生活を通じて見聞を深める 【留学先】米国、英国やシンガポールなどのロースクール、ビジネススクール 【期　間】原則2年　2年目は欧米やアジア各国の法律事務所、機関、企業などで研修 【費　用】授業料および渡航費ならびに生活費の一部などをTMIで負担 留学準備のサポートとしては、日頃から英語案件に関与する中で英語力を磨いていくOJTの機会がたくさんあるのはもちろんのこと、入所直後のセブ島英語研修や所内会議室での外部講師による英会話レッスン（前述）など、充実したサポート体制が設けられている。また、学費・渡航費の全額負担のほか、生活費サポートなどの留学中の経済的援助が非常に充実していることも、長い目で見て人を育てるTMIならではの留学制度の特徴。

TMIの海外留学制度

国内地方オフィスや海外オフィスで研修することによって、それぞれの地域で働くことの意義ややりがいを実感してもらい、弁護士・弁理士一人ひとりの視野を広げるとともに、より幅広い人間関係の構築を通じて、東京と地方・海外オフィスとの積極的かつ円滑な協働を図ることを目的とした研修制度。滞在中の住居・宿泊費や往復1回分の交通費などは事務所が負担する。必ずしも将来的に研修先のオフィスで勤務することが義務づけられるわけではなく、できるだけ広く、多くの希望するアソシエイトに経験してもらうよう、運用されている。また逆に、国内地方オフィス所属のアソシエイトが東京オフィスで一定期間研修するということも行われている。

国内地方オフィス・海外オフィス短期研修制度

多くのアソシエイトは、官公庁や、海外の法律事務所、国内外の企業、政府機関、海外オフィスでの出向・駐在を経験する。TMIを一度離れて別組織に身を置く形態を「出向」、TMIに籍を置きつつ週に数日他企業で勤務する形態を「駐在」と呼ぶ。期間は、出向・駐在先の事情・ニーズによるが、短くて数か月間、長くて2年間程度。出向先は、国内外の企業にとどまらず、官公庁（金融庁、外務省、総務省、厚生労働省、文部科学省、証券取引等監視委員会、公正取引委員会など）、東京証券取引所、国会議員秘書など多岐にわたる。出向を通じて得られる経験は出向先やそれぞれのアソシエイトの目的により大きく異なるが、官公庁であれば、政策・法令立案過程や行政事務に関与し、法律実務家とは異なった観点から法令や産業界との関わりを持ち、法令などへの理解を深めることが可能。企業であれば、企業内における法務ニーズや業界の動向などをより正確に把握できる。

TMIの出向・駐在制度

このように、TMIでは若手弁護士が自分の道を見つけるためのさまざまな機会や制度が用意されています。それらをうまく活用して、なりたい自分、選ばれる弁護士に成長していってほしいと願っています。 　「なぜTMIには優秀で、独立してひとりで闘っていくことができる弁護士が多いのに、あえてTMIに残り続けるのか？」とよく聞かれることがあります。なかなか難しい質問ですが、個人的には、先輩や後輩弁護士、弁理士など、TMIの仲間から学んだり、刺激を受けたりする機会が無数にあるからだと思っています。ひとりでできることには限界があります。その点、TMIには圧倒的な情報量がありますし、何より、それを惜しみなく共有する文化があります。TMIに所属することで、大手事務所に所属している安心感や多くの仲間とのつながりを維持しながら、自分のやりたいことをとことん追及することができます。本当に「良いとこ取り」だと思います。

TMIには弁護士として一人ひとりが成長していくための最高の環境があります。しかし、このTMIというプラットフォームを活かして成長できるか、充実したキャリアを切り拓くことができるかは、最終的にはその人の意欲次第だと思います。必ずしもTMIへの入所時点で「これが自分の専門性だ」「こんな弁護士になりたい」とすべてが明確になっている必要はありません。ただ、自分のやりたいことや、なりたい弁護士像を追求したいと考えている意欲的な人にとっては、最高の環境なのではと思っています。

TMIでは、弁護士たちが自ら話し合って、研修・キャリアの仕組みづくりや若手弁護士の育成を行っている。今回は、若手弁護士の研修・育成制度を設計する弁護士研修委員会の委員長（インタビュー当時）である大越有人弁護士、事務所入所時のローテーション制度の設計やローテーション後のアソシエイトのキャリアプランニングをサポートする、ACP委員会の委員長（インタビュー当時）である成本治男弁護士に、TMIの弁護士育成方針や、TMIだからこそ得られる経験や成長機会について聞いてみた。

TMIは「選ばれる弁護士」になるための最高のプラットフォーム


2000年にTMIに入所し、入所6年目の2006年にパートナーに就任。不動産ファイナンスを自己の専門分野の中心としつつ、アソシエイトの育成・評価などを行うACP（アソシエイト・キャリア・プログラム）委員会の委員長（インタビュー当時）として、日々アソシエイト弁護士の育成に尽力している。

法律事務所、金融庁での勤務経験を経て、TMIに2011年に参画。2014年にパートナー就任。金融レギュレーションなどのファイナンス領域に専門性を置きながら、幅広い分野の企業法務を担当している。そうした弁護士としての通常業務に加えて、弁護士研修委員会の委員長（インタビュー当時）として、委員会の他のメンバーとともに弁護士の研修・キャリア設計に携わっている。

TMIの採用活動の中核を担うのが、私の所属する「弁護士（新人）採用委員会」です。新人採用に情熱を持った若手パートナーを中心に、インターンや選考プロセスの検討・運営から、採用する一人ひとりに関する採否決断までを担います。インターンシップや面談の時期は、採用委員会の垣根を越えて、TMI全体で100名以上の弁護士が何らかの形で採用活動に関わっています。　TMIがなぜ採用活動に時間とリソースを惜しまないのか、端的に言えば、法律事務所は「人」で成り立っているからです。私たち弁護士は分かりやすい商品や目に見えるサービスをクライアントに提供しているわけではなく、「人」つまり弁護士の質がアウトプットの良し悪しに直結します。言うまでもなく、人はTMIにとって最も大切な財産です。　特にTMIにおいて特徴的なのは、決まったセクションやある特定の業務をやってもらうことだけを見据えながら採用するのではなく、TMIの弁護士として一緒に働きたい人材かどうか、TMIで成長できる人材かどうか、という全事務所視点で採用活動をしている点です。単に優秀な人物かどうかだけでなく、TMIという環境で成長できる人物かどうか、さらに言えば、5年後にシニアアソシエイトとして、10年後にパートナーとして一緒にやっていきたい人物か、というポテンシャルまで想像し、徹底的に向き合います。毎年40～50名の新人弁護士を採用しているので、入所した全員と一緒に仕事をできるわけではないのですが、自分が採用したアソシエイトと入所後に案件をともにしたり、自分とは別の領域で活躍している姿を見たり聞いたりすると、非常に嬉しくなりますね。

TMIで活躍できるのはどのような人材か、というのは採用活動の中でよく聞かれる質問です。高学歴であること、成績が良いこと、事務処理能力・コミュニケーション能力があること、どれも魅力的です。　しかしながら、TMIは「いずれは全員が独自の強みを持ったパートナーになってほしい」という想いで採用活動を行っているため、最初からすぐに活躍できるかという観点だけで学生を見極めることはしません。正確無比なドキュメントを作れたり、言われたことをしっかりこなせたりするアソシエイトは、パートナー弁護士にとってはありがたい存在ですが、そのような能力だけでは一人前の弁護士になっていける素質を見極めることは難しいのです。　事務所の効率化だけを追求すれば、事務所がアソシエイトの配属や専門を決めて、特定の業務分野に限定してアサインした方が、当該分野の仕事ぶりだけを見れば、手っ取り早くパフォーマンスを上げることができます。既に「自分の分野はこれだ」と確信している人であれば、それも正しい決断だと思うのです。実際、TMIに入所した新人の中でも、自身の関心分野がしっかり確立している人は、ローテーション中であっても早い段階から専門分野を絞っていく人はいます。しかしながら、ロースクールを修了したばかりの皆さんや、あるいは予備試験の若年合格の方などであればなおさら、自分がどのような分野に興味があるのか、どのような業務に向いているのか、そもそも世の中にどんな分野があるのかもまだまだ分からない、という方が多いのではないでしょうか。　TMIではあえて2年近くのローテーションを経験してもらうことによって、多数の先輩弁護士と組んであらゆる仕事を体験し、自分が追求するべき専門性や目指すべき弁護士像をじっくり考えていきます。若いうちにさまざまな分野に携わった経験は、弁護士の血となり骨となり、自分の中に永く存在し続けます。このことは、10年後、皆さんがパートナー弁護士となり依頼者からあらゆる角度の相談を受けるようになったときにこそ、活きてくるのです。実務を経験しながら自身がどのような強みを持っているのか、長い弁護士人生をどんなことに捧げたいのかを考えたいのであれば、TMIは最適な環境だと思います。自分の努力で勝ち取った弁護士人生のスタート地点に立っているわけですから、皆さんにはぜひあらゆる可能性を排除せず、自律的に考え、悩み、自分の弁護士としてのキャリアに色づけをしていってほしいと考えています。　TMIらしさとは何か、というのもよく聞かれますが、個人的には、「TMIらしい人」というのはいないと思っています。いろいろな人がいることこそが、TMIらしさであると思っています。上記のような考え方が共有できてさえいれば、私たちはその中で多様性をもって採用したいと考えています。現に、さまざまな大学・ロースクール出身の方、企業の法務部や官庁などで社会人としての経験を積んでから司法試験に挑戦した方、元官僚の方、弁護士以外の資格を持っているプロフェッショナルの方など、幅広い人生経験を重ねてきた人たちがTMIに入所し活躍しています。このような多様性は事務所にとって間違いなく財産です。豊かな人間性と多様な個性を持った人が集まり、それぞれの持ち味を認め、高め合い、個々人が鍛えたスキルと経験を結集して、社会のために、クライアントのために、最大限尽力する存在であり続ける…これこそがTMIが大型総合法律事務所として存在する意義なのです。「弁護士はこうあるべきだ」というひとつの答えに縛られず、定義を広げ続けることで、ここで働く一人ひとり、そして事務所の可能性が開かれていきます。

おそらく皆さんとTMIの初期接点は、サマー・アソシエイト・プログラムやウィンター・アソシエイト・プログラムなどのインターンシップ・プログラムになると思います。プログラム期間中、私たちは参加する学生を「インターン」や「クラーク」ではなく「アソシエイト」と呼びます。それはなぜかと言いますと、あたかも新人弁護士として実際TMIに入所したかのような思いでプログラムに取り組んでほしいと思うと同時に、迎え入れる私たちも、日ごろ若手弁護士に接するのと同じように、一人ひとりと全力で向き合う覚悟を持っているからです。そうでないと参加する学生もここで働く実感を持つのが難しいですし、私たちも皆さんの「弁護士としての」人柄や実力を知ることができません。　TMIのインターンシップは、一方的な講義だけでは終わりません。数日から1週間という限られた期間の中ではありますが、実際にTMIの弁護士が取り組んだ生のケースを素材に、個人やグループで解決策を考えてもらう時間を用意しています。例えばクライアントからの質問を実際に提示し、あなたが弁護士ならどう答えますか？という問いを立てます。このようなケースを、同時に複数取り組んでもらいます。弁護士の仕事はこちらの都合の良いタイミングで依頼が来るわけではなく、タイトなデッドラインの中で、複数のご依頼が同時に来たりするものです。リアルな業務をシミュレーションして、時間制限がある中で向き合ってもらうのです。　実案件に取り組むことを通して感じてほしいのは、企業法務の世界で出てくる問題は、学術的な教科書事例とは全く違うということ。皆さんがこれまで司法試験を含む受験の世界で経験してきたことは、教科書や試験に出てくる問題には必ず「正しい答え」が用意されていて、それを見つける作業だったかと思います。ところが、実務に出ると、企業内で法務を担当している方々が弁護士に費用を払って質問してくる内容や、裁判やプロジェクトの中で問題になる法的論点は、非常に複雑かつ高度であり、ちょっと調べただけでひとつの答えが端的に導き出せるようなものではなかったりします。インターンシップ中、学生たちが所内の図書館に行って本を引っ張り出したり、インターネットで検索をかけたりしてばかりいるのを見かけますが、そんな方法で答えが見つかるのであれば、きっとクライアントが自分たちで解決できたはずです。彼らが外部弁護士に依頼している理由は、私たちの専門性を活かした、私たちなりの見解やアドバイスを知りたいから。インターンで来る皆さんにも、目の前に置かれた事実を見つめて、自分の頭を使って、自分なりの答えを出してほしいのです。　このように真剣に向き合って出してくれた仮説に対しては、私たちも真剣なフィードバックという形でお返しします。良かったところはどこか。もっとこういう視点で考えることもできたのではないか。このようなフィードバックのやりとりが今後の法曹としての考え方に少しでも参考になれば嬉しいと思っています。

TMIはよく「自由な事務所だ」という印象を持たれることが多いのですが、放っておかれる自由、ドライな自由、という意味での自由とは違います。意思を持っている弁護士たちが、自ら道を選び、誰からも邪魔をされることなく前に進める環境があるという意味ではとても自由です。ただ、それをひとりで孤独に追求する必要はなく、全力で周囲がサポートするのがTMIの風土です。辛いときに相談ができないのでは、本当の意味での「自由」は確保されないと思うのです。　先ほどの通り、TMIは人を大事にする事務所であり、そのマインドを弁護士一人ひとりが受け継いでいます。制度として相談担当パートナー制度があったり、同じ専門分野を持つ弁護士の間で情報共有をしたりするのは当然のこと、垣根を越えて若手に対して熱意を持ってサポートする先輩弁護士たちがたくさんいます。例えば、若手弁護士が興味を持っている領域があれば、それを発信するためのプラットフォームがあり、それを見た先輩パートナーが仕事をアサインしてくれたり、留学や出向の機会を持ちかけてくれたりすることも。そういう制度や仕組みがあるというだけでなく、実際にみんながそれを利用している、頻繁に見てくれているということが重要です。TMIには制度だけでなく風土としてそういう気持ちが根づいています。私を含むパートナーたちもアソシエイト時代にそうした恩恵を受けています。一人ひとりが手を差し伸べてくれたことで、いまの自分がいます。ですから、後輩弁護士たちに同じような環境を提供してのびのびと成長してほしい、そういう形で事務所に恩返しをしたいという思いが一致しているのだと思います。　このように、個々の個性を尊重し長い目で見て人を育てる精神が、業界内でも圧倒的に低い離職率となってあらわれているのだと思います。これは、人を育て、人とともに育ってきたTMIだからこそ確信をもって言えることです。ただ、自由にやりたいことに挑戦できるとはいっても、風船のように飛んで行ってしまうような感じの自由とは違います。私自身も他のパートナー弁護士も、そう決意すればひとりでやっていくこともできるかもしれませんが、不思議と独立しようとは思わないんですよね。TMIに所属していると支え合える仲間がいるから、TMIという組織の引力が働いている中で自由に羽ばたいているという感じです。

弁護士を志す多くの人にとって、これまではある程度舗装された道の上を歩いてきたような感覚があるかもしれません。受験勉強をがんばって良い高校、大学に入って、またたくさん勉強して良い成績を保ち、ロースクールに進学し、司法試験を受けて早期合格を目指す。それらのステップにおいては、常に「答え」を見つけることを求められてきたかと思います。司法試験の合格までこぎつけるには多大な努力が必要で、すばらしいことです。しかし、いまから始まるのはあなた自身のキャリアです。社会の常識や他の人が作り上げた固定観念に捉われず、自分の価値観で自分の進むべき道を選択しながら力強く進んでいってほしいと願います。　人生100年時代のいま、これから入所する弁護士たちは、50年以上に及ぶ弁護士キャリアを歩むことになるでしょう。人生のうち大半の時間を仕事に費やすと考えたとき、入所する事務所の実績や知名度はもちろん大切ですが、自分がここで何をできるのか、どのように成長できるのか、誰に何をもたらすことができるのかを徹底的に考え、悔いのない選択をすることが大切だと思います。　その観点でいうと、TMIには悔いのない決断をするために最適な環境が整っていると思います。ここは、周りに支えられながら、自分なりにチャンスを自由に掴める稀有な場。王道分野のど真ん中を突き進んだっていい。誰も挑戦したことのない新しい分野を切り拓いたっていい。自分自身が魅力を感じて、情熱を持って向き合える領域であれば、私たちは全力で後押しします。　一生をかけて情熱を持って取り組める、あなたにしかできない仕事を見つけてほしい。TMIが、その一助になれたらと思います。

TMIの採用を担うのは、若手パートナーを中心に10数名で形成される「弁護士（新人）採用委員会」。その委員長を務める（インタビュー当時）長田旬平弁護士が、TMIがどのように新人弁護士採用に取り組んでいるのかを紐解いた。TMIはなぜ弁護士100人体制で採用活動を行うのか。そして応募する学生たちに、どのようなことを期待するのか。

私たちが採用するのは1年後のアソシエイトではなく10年後のパートナー



2007年にTMIに入所し、英国留学等を経て、2016年にパートナー就任。自身は海事・船舶ファイナンスを専門分野の中心としつつ、弁護士（新人）採用委員会の委員長（インタビュー当時）として、新人弁護士の採用活動やインターンシッププログラムの企画・運営等に関与している。