法学部に進学したのは、子供の頃に見た法曹ドラマの影響でした。「なんてカッコイイのだろう！」と、法律の仕事に対して漠然とした憧れを抱いていたことを覚えています。ただ、就活を始めた当初は、法律の仕事は特に視野に入れておらず、メーカーの総合職をはじめ幅広い業界を見ていました。そんなある日、姉がこう言ったのです。「せっかく法律を学んだのだから、法律事務所の秘書も受けてみたら？」

早速いろいろと調べて、大手事務所は一通り見て回りましたが、TMIの説明会に参加したときに知った、特許商標の仕事が気になりました。法学部での勉強には苦労しつつも、生活に身近な知的財産の授業が楽しかったため、実は身の回りにたくさん溢れている特許や商標を仕事にするということに興味が湧き、秘書から特許・商標事務へと志望を変更しました。　いくつかの特許事務所も訪問しましたが、TMIを第一志望に考えていました。規模も大きく、ずっと安心して働いていけそうだと感じたからです。また、面接は終始和やかな雰囲気で、審査されているというよりは人柄を見ていただいているという印象だったのも、TMIに心地よさを感じた理由のひとつです。

TMIの特許・商標事務は、特許と商標で大きく分かれ、さらにその中でも業務内容によってグループが細分化されています。私が所属しているのは、日本のクライアントの商標を海外に出願するチームです。　クライアントからの「こんな分野で、こんな商品・サービス名で、この国に出したい」というリクエストを受けて、その国の代理人となる法律事務所と連携し、事前の調査から出願、そして審査結果への対応から登録まで、責任を持って対応します。基本的に、クライアント・海外代理人それぞれとメールでやり取りをしていて、各フェーズにおけるクライアントへの報告書の作成、応答期限の管理、問い合わせへの対応、請求書の発行を行うのが主な業務内容です。　出願から登録までに要する期間や、審査の方法、各フェーズで必要となる書類や対応方法は国によって異なります。さらには、法改正も頻繁に行われるため、海外へ出願するチームでは、主体的な情報収集や情報のアップデートは欠かせません。

入所当時は覚えることが膨大で大変でしたが、指導担当の先輩が隣の席で手取り足取り教えてくださいました。作成した出願書類や海外代理人・クライアントへのメールなどは弁理士の先生のチェックが入るとはいえ、ポチッとワンクリックでネットから出願と送信ができてしまうので、その便利さが新人の頃は怖かったです。どこかにミスはあるという前提での、細部にわたる確認は欠かせません。集中力が大切な仕事だと思います。　それでも、やはり身近なものに関わっているという楽しさは、学生の頃のまま変わっていません。いまは飲料メーカーの案件を担当することが多いので、コンビニやスーパーの売り場に行くたびに、思わず心の中で叫んでいます。「あっ、これ！うちのチームで関わった商品だ！」　そのような法律事務所のイメージとはかけ離れた、ミーハーともいえる感覚に浸ってしまうこともあります。出願までのプロセスは緻密ですが、最後に得られる達成感はとてもシンプル。このような密かな歓びを味わい続けていくためにも、知識とスキルをもっともっと高めていきたいと思っています。

就活では2度の方向転換をして、法律事務所という道を選んだ。入所後は、日本のクライアントの商標を海外へ出願する案件で、弁理士のサポートを担っている。どんな仕事にどんなスタンスで臨み、その先にはどんな歓びが待っているのか？

プロセスは大まじめに楽しむ。結果はミーハー心で歓ぶ

大学の社会学部で専攻した法律に携わる仕事をしていきたい——。そう思って最初は中規模の法律事務所でパラリーガルとして働き、その後社会人5年目のときにベンチャー企業の法務部に転職しました。社長直属部門だったこともあり、前職とは違ったやりがいも得られましたが、多くのクライアントのさまざまな案件に関われる法律事務所での仕事の魅力を再認識することにもなり、TMIへの転職を決めました。　TMIでは、裁判実務と破産手続をサポートするグループに配属されましたが、同時に労務案件もカバーしていました。当初は業務が回っていましたが、TMIの規模が拡大し始めた時期でもあり、弁護士の人数も業務も急増するにつれて、状況が変わっていきます。さまざまなクライアントから、類似する案件のご相談を繰り返しいただくようになってきた中で、弁護士が困り顔でこう尋ねるようになったのです。「1年前のこの労務案件なんだけど、誰が担当してくれたんだっけ？」

労務案件の窓口をつくり、情報を集約させて効率よく共有できるようにしよう。前職で労務案件を経験していた私が、その役割を担うことになりました。まずは、弁護士や同僚が監督官庁に照会をかけたときの回答を集約することから始めると、事務所中の労務関係の情報が私に集まってくるようになりました。経験を積み、自然と知識が増え、次第に弁護士からの相談に、より迅速かつ的確に答えられるようになりました。　パラリーガルの仕事は、文書作成、調査、裁判所や各省庁、その他関係機関での手続など、いわば弁護士のサポート役です。現在では、それぞれ得意分野を持ったパラリーガルが約50名在籍しています。その中で最も多くのパラリーガルが担当している案件は、会社の設立登記、買収関連の手続きなどの企業法務に関する業務で、案件によってはテレビや新聞を賑わせるようなこともしばしばあります。　労務関係の業務には、そのような華々しさはありませんが、まさに最近のビジネスの動きを反映した、これは面白い！と思える案件が年々増えてきています。労務の領域においても、先生たちの挑戦的なスタンスが浸透してきた証だと思います。

例えば、突発的に発生した求人ニーズに対応するオンラインサービスの適法性を検討するにあたり、行政が定めた従来の枠組みと、このような新しいビジネスモデルとのギャップをどう埋めるのか。不法就労などのリスクをどう解消するのか。さまざまな課題を担当の弁護士が検討していく上で、必要となる法律や情報のリサーチを行うことが案件の中での私の役割です。　他にも、マイナンバーカードの取り扱い、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種についての相談、法改正や監督官庁の動向リサーチなど。どの分野においても、時代の移り変わりとともに広がる案件の目新しさと幅広さがあり、それにともなって自分の世界もどんどん広げていけるのが、TMIのパラリーガルの面白さだと感じています。ひとりでタイムリーにキャッチアップできる情報には限度がありますが、分野間の垣根が低いため、お互いにサポートし、ノウハウを共有しながらそれぞれの仕事を進めています。

出産や育児の期間も助けられました。私は入所3年目の2010年に出産し、2012年の4月に復職しましたが、1年半のブランクも、TMIでは大きな不安にはなりませんでした。家庭と業務を両立して活躍されているたくさんの先輩方を見てきたからだと思います。所内で労務分野の案件を多く取り扱う弁護士が中心になってノウハウを共有するチームが確立されたのは、ちょうど子供が4歳になるまでの時短勤務の頃でしたが、私もそのチームの中心メンバーとしての役割を果たすことができました。その後、大学で労働法を学んだ若手スタッフも加わり、より充実した体制で労務チームの専門性をサポートしていけるようになってきています。　私に多く寄せられる相談のひとつに厚生労働省関係の書類の手続があります。弁護士から質問があると、ガイドラインや1000ページほどもある業務取扱要領などさまざまな資料の中から、該当箇所を提示して報告します。「へえー、こんなに細かく載っているんだ！　やっぱり労務のことなら君に聞くしかないな」　普段からどれだけ知識を蓄積できるか。どれだけ新しいことに興味を持って学べるか。どれだけの正確さとスピード感で仕事にあたれるか。どれだけ密に弁護士や同僚とコミュニケーションをとれるか。それらが、パラリーガルが磨くべき強みだと私は思っています。

事務所規模が徐々に拡大していく中で、自ら手を挙げて専門領域のサポート体制を充実させてきた。出産育児休暇明けの時短勤務期間中にも、その専門性に磨きをかけた。家庭とも両立しながら、「労務なら君に聞くしかない」と頼られるまでになったプロセスとは？

弁護士たちと共に、自分の世界も広げていく


大学では法学部ではなかったので、就活を始めた当初は、法律事務所で働くことは考えてもいませんでした。法律事務所を志望するようになったきっかけは、大学の就職支援室でOGの皆さんの採用実績を閲覧したことです。「こんなに多くの先輩が、就職しているんだ」　ネットで調べたり、OG訪問をしたりしているうちに、法律事務所の秘書という仕事に徐々に惹かれていきました。それが第一志望に変わったのには、3つの理由があります。　1つめは、私自身が長女で世話好きということもあり、弁護士をサポートする仕事内容そのものに魅力を感じたためです。また、間接的にではありますが、案件の解決を通して、いろいろな形で社会の役に立てる点も素晴らしいと思いました。2つめは、英語を使う機会があることです。大学時代、英文学科で学んできた語学を多少なりとも活かすことができると思いました。そして3つめは、女性が多く、女性が働きやすい職場だと思ったからです。

OG訪問では、TMIでは同じ大学出身の先輩方が産休・育休を取得しながら仕事を続け、現在も秘書として活躍していると知りました。特に印象に残ったのは、子育て中のため時短勤務をされている、あるOGの方がおっしゃった言葉でした。「自分がその立場になったときには誰かが助けてくれる。だから、いまは自分が誰かを助ける。ここではそれが当たり前になっているから、心から安心して働き続けられるの」　TMIでは、他の企業や法律事務所と比べても、説明会や面接、OG訪問を通じて、人を重んじる姿勢が随所から伝わってきたのです。この事務所の一員として働きたいと強く思いました。

入所直後からいまに至るまで、主にファイナンスを専門とする弁護士を担当しています。最初に感じたのは、仕事が非常に多岐にわたり、また、丁寧さが求められるということです。　まずは担当弁護士の日程調整、スケジュール管理、出張の手配、会議室の手配・準備、電話対応、請求書の作成といった日々のルーティンワークがあります。さらには個々の弁護士が抱えている案件に応じて、各種契約書や報告書の誤字脱字などの形式チェック、製本、送付、裁判書面や証拠書類の準備・提出などを行い、ときには裁判所や官公庁、弁護士会、クライアント先へも足を運ぶことがあります。その他、勉強会やセミナーの準備、新人スタッフへの研修の計画、弁護士採用のサポート…と、多岐にわたる業務に関わってきました。　数多くの仕事の中で特に印象に残っているのは、TMIが第三者委員会として不正調査に関わった案件です。私がサポートした弁護士のチームは20人近くにものぼり、大量の資料のコピー、ファイリングや、多くの弁護士の出張のスケジュール調整などを行いました。当時は入所2年目だったこともあり、慣れておらず周囲に迷惑を掛けましたが、先輩秘書や先生方にも助けられながら丸2年続いた案件をサポートし続けることができました。この経験のおかげで、自分自身とても成長できたと思います。

入所4カ月目で初めて2名の弁護士を担当しましたが、その後少しずつ増え続けて、現在はパートナー弁護士2名を含めた合計4名をサポートしています。こちら側から積極的にコンタクトした方がやりやすい先生もいれば、必要に応じて最小限のコミュニケーションで仕事を進める先生もいて、サポートの仕方は弁護士によって変わってきます。共通して心がけているのは、その先生が何を求めているのかを想像し、先読みして動くことです。そのために必要なのは、先生方やその案件、さらにはその先にいるクライアントへの興味関心ではないでしょうか。「あのクライアントに喜んでもらえたよ！」　この一言が、自分が担当している先生がクライアントに認められることが、私の何よりの喜びです。弁護士の先生方はプロフェッショナルとしてクライアントに接していますが、私も、秘書のプロフェッショナルであるという意識を持って、先生方、ひいてはクライアントに貢献したいと思っています。入所4年目の頃、私に大きな自信をくれたのは、クライアントから直接いただいた、こんな言葉でした。「さすが、〇〇先生の秘書。すばらしいですね！」

法とは無縁の学生生活を送った彼女は、3つの理由から法律事務所の秘書という仕事を選んだ。現在は、パートナー弁護士を含む4名の弁護士を担当している。その多岐にわたる業務とは？常に心がけていることとは？